コラム

離婚調停とは

【質問】
 現在、夫と離婚の話し合いをしていますが、色々と話すべきことがあるのに、お互い感情的になって話し合いになりません。協議離婚ができない場合、家庭裁判所に調停の申立てをする必要があるとお聞きしましたが、どのような手続なのでしょうか。また、弁護士に依頼する必要がありますか。

【回答】
 当事者のみでは離婚の話し合いがうまくいかない場合、家庭裁判所へ調停申立てをする必要があります。
 調停は、家庭裁判所で行う話し合いの手続きです。調停委員が中立の第三者として話し合いの中に入るため、当事者のみで話し合うよりもスムーズに話し合いが進みます。
 また、離婚するときには法律のみではうまく解決できない問題(たとえば荷物の引き取りをどうするか等)があり、話し合いで合意を目指すしかないこともあります。そのような問題についての様々な取り決めを行うために、調停はとても有益な制度です。
 
 どこの裁判所で調停をするか
 離婚調停は、原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをすることになります。
 たとえば、あなたが東京にいる夫と別居して、岡山にある実家に帰ってきている場合、岡山家庭裁判所ではなく、東京家庭裁判所に離婚調停の申立てをしなければなりません。 調停期日には、原則としてご本人が出席する必要がありますので、管轄裁判所がどこになるのかはとても重要です。
 もっとも、コロナ禍が広がって以降、裁判所に直接行かなくても電話による調停やウェブによる調停(ウェブ調停は岡山では2022年10月頃から開始予定)が柔軟に認められるようになりました。遠方の裁判所に申立てをしなければならない場合は、電話やウェブが利用できるかどうか、裁判所に相談されるとよいと思います。
 
 どうやって申立てをするか
 
 調停をしたい人が、管轄のある家庭裁判所に調停申立書を提出する必要があります。

 離婚調停の申立てに必要な申立書の書式は、最寄りの家庭裁判所の相談窓口でもらうことができますし、インターネット上の裁判所ホームページで入手可能です。(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_23/index.html)
 丁寧な記入例も掲載されていますので、これを参考にすれば、どなたでも申立てが可能だと思います。  
 ただし、裁判所に提出した申立書は相手方に送付されますし、その他の書類についても閲覧・謄写されることがあります。したがって、調停申立書にどこまでの記載をするか、またどのような資料を添付するかについては、慎重な検討が必要です。

 調停はどのように進んでいくか  
 これは、各地の裁判所で様々ですので、現時点の岡山の取扱いについて説明します。

 調停申立てが家庭裁判所により受理されると、第1回の調停期日が決められます。裁判所の込み具合にもよりますが、受理から1か月から1か月半くらい先の日が指定されるのが一般的です。  
 調停期日は、通常、午前であれば10時から、午後であれば1時30分から始まり、2時間程度が予定されています。
 申立人と相手方は、それぞれ別の待合室で待機し、30分ごとの交代で調停室に入室します。原則として、当事者本人が顔を合わせることはないのですが、同一庁舎内で行われますので、鉢合わせをする可能性があります。もっとも、DV等により相手方と鉢合わせすることを避ける必要があるケースでは、裁判所はきちんと配慮してくれますので、必ず裁判所や依頼した弁護士に伝えるようにしましょう。

 調停は非公開の調停室で行われ、2名の家事調停委員が、申立人、相手方双方から、それぞれの言い分を聞きます。本来、裁判官も調停委員会のメンバーなのですが、常に同席をするわけではなく、重要な節目であるとか、調停の成立・不成立の時のみ同席する運用となっています。
 
 1回の調停期日では、基本的に30分交代で2~3回双方の言い分が聞かれ、双方の意見を調整しながら、合意に向けて話し合いがなされます。ほとんどの場合は第1回調停期日で合意が成立することはなく、少なくとも2~3回の調停期日が開かれます。争点が多く複雑な場合には、5回、6回と期日を重ねることはよくありますし、もっと長くかかることもあります。 調停期日は、大体1か月から1か月半に1回くらいのペースで進んでいきます。
 
 調停が成立した場合は、合意した内容を記載した調停調書という書類が作成されます。この調停調書は、判決と同じ非常に強い効力があり、例えば、財産分与や慰謝料、養育費といった金銭の支払を決めた場合、これをもって強制執行の申立てを行い、相手方の財産を差し押さえることも可能です。  

 合意がまとまらず、調停が不成立になった場合、不成立調書が作成されますが、それでも離婚を求める場合には、離婚訴訟を提起することになります。

 弁護士へ依頼した方がよいか  
 家事調停は、国民の誰もが手軽に利用できる手続ですので、調停はご本人で対応して訴訟から弁護士に依頼される人もいます。  
 しかし、私は、当初はご本人のみで調停を始めたもののうまくいかず、途中から弁護士に依頼して弁護士と共に対応した結果、最終的にはうまくいったケースを何度も目にしています。離婚といっても、お一人お一人状況が異なりますので、調停中から弁護士に依頼した方がよいケース、調停を申立てる前から弁護士が就いた方がよいケース、時には別居前でも弁護士が必要なケースもあります。
 たとえば、相手方が離婚を頑なに認めず、将来離婚訴訟に移行する可能性が高い場合、親権者の指定で激しく対立している場合、複雑な財産分与が絡む場合、DV・モラハラなどがある場合、相手方から頻繁に連絡があることで生活に支障がある場合等は、必ず弁護士に依頼した方がよいと思います。
 また、監護権が争いになるケースは最もシビアで、一刻も早くこれを専門的に取り扱っている弁護士に依頼する必要があります。  
 その反面、私が法律相談を受ける中で、「調停はご本人で対応してもらい、訴訟になったら弁護士に依頼するということで大丈夫」と感じるケースもあります。そのような場合は、ご本人に丁寧に説明を行い、状況が変われば再度相談に来ていただくことを勧める場合もあります。  

 このように、どの段階から弁護士に依頼した方がよいかどうかは、ご本人にはなかなか判断がつきにくいのです。そのため、まずは離婚を検討されている段階で法律相談を受けてみることが何より重要です。依頼した場合の費用の点も含め、まずは信頼できる弁護士にご相談ください。